【ミク10周年記念】ボーカロイド系マストドン「vocalodon」がブーストする創造性について

初音ミクはちょうど今日、発売から10周年を迎えます。
色んなものに栄枯盛衰がありますが、日本のネットカルチャーのなかで、この初音ミクと、新興SNSマストドンのブーム終焉がささやかれています。

以前からボカロ文化は「焼け野原」だとか言われてましたが、先日は有名ボカロPであるハチ(今は"米津玄師"の名義でも活躍中)が「砂の惑星」という曲を発表し、トップ・ボカロP自身が文化の風化を示唆したとして物議をかもしました。

マストドンとはツイッターに似た機能を持つミニブログで、経営不安により閉鎖リスクがささやかれるtwitterの代替として今年4月ごろに注目を集めました。が、今のところ当初の勢いを失っているといわれています。

しかし!その二つが合体した「vocalodon.net(通称ボカロ丼)」が、いま、激烈にアツい!!ということを申し上げたいのです。

vocalodonとは?なにがアツいの?

vocalodon.netは「ボカロクラスタが集うMastodonインスタンス」であり、TOMOKI++氏の個人出資による運営です(インスタンス≒サーバーと考えてください)。2017年4月16日に誕生したこのインスタンスは8/30現在、ユーザー登録数は1,595人、総呟き数は739,143という規模。8月は新規登録が25人前後/週、呟きが3万前後/週といった具合です。

しかしここで注目したいのはその規模ではなく、ユーザーたちの制作活動が活性化しまくっているという点です。

このボカロ丼上ではユーザー有志によるコンテンツ企画が活発で、現在コンピ盤が3つ、イラスト集が一つ、そしてtwitterとの連携機能開発が進行中です。このほかにもボカロ丼を通じて知り合ったユーザーたちによる共同作品制作も増加しているようですので後ほど紹介します。また過去のプロダクトとしてVocalodon VSTプラグイン、VocalodonTシャツ、Vocalodon wiki、Vocalodonロゴ(アニメーションロゴもあり)もあります。このように、ジャンル問わず多岐にわたるクリエイティビティの発生源となっているのがボカロ丼です。
↑これらの動画はボカロ丼にて制作メンバーが結成されています。

手慣れたチャットがコミュニティと協働を生む

この活況と協働の背景が何なのかが気になるところですが、まず挙げられるのはユーザー同士の距離感の近さでしょう。

マストドンはユーザーの呟きを一括して表示できるため殆どチャット同然になるのですが、ボカロ丼はヘビーなネットユーザーが多いせいか、チャットでの立ち振る舞いを心得た方が多くてコミュニケーションが円滑ですし、ユーザーたちによる創意工夫も自然となされます。

それが良く現れているのが「#ボカロ丼自己紹介タイム」です。ボカロ丼では22時ごろになるとこのハッシュタグをつけて各々が自分の作品や経歴をアピールする慣習ができていて、新参者もチャットに溶け込みやすい雰囲気になっています。ここでのPRをきっかけに次の共同制作につながることも考えられます。

また、個人的に非常に興味深かったのは、「あるユーザーの不幸があったときにムードが重くなり、その週はつぶやき数が減少した」という事態です。つぶやき減の原因が訃報だけだったかは分かりませんが、個人的な出来事がSNS全体の動向に波及するような現象は明らかに起きていて、あたかも地域コミュニティが形成されているかのようです

アーキテクチャを超克する、たくましいボカロ厨たち

ニコニコ動画はそのヘンテコな仕様がユーザーたちの創造性を伸張させたと、情報環境学者の濱野智史が指摘していました。一方マストドンの仕様の場合は…むしろ妨げになっているように見受けられるフシもあります。というのも、使われ方が殆どチャット同然であることの裏返しで、話題がコロコロ逸れやすいため特定のテーマで議論しようとしても収拾がつきづらく、しかも過去の発言がさかのぼりにくいのです。

そのため本来ならマストドン上で企画を立ち上げても頓挫しやすいはずなのですが…ボカロ丼の場合は最終的に形になっています。場合によっては運営者とユーザー有志が協力しながら解決策を取ってしまうから面白い(このあたりのエピソードはオープンソースやAPI公開戦略の事例として参照したらさらに学術的な議論も可能なのかもしれませんが、専門ではないのでどなたかお願いします)

こんなことができる理由は、どちらかというと属人的です。管理人のTOMOKI++氏は元々SNS運用経験があるうえに、音楽制作ソフト上からボカロ丼を閲覧するというトンチキな拡張ツールを開発できる技術力をお持ちです。ユーザーたちも多くが音楽・イラスト・動画・ソフトウェアなどの制作経験があり、どんな形であれ「アイデアを出しながら形にする」ことには自然と参加してしまえる方々が多い(と思いながらタイムラインを眺めています)。

こういう方々が密なコミュニティを形成しているがゆえに、ボカロ丼では豊かな創造性が生じているのですが、このコミュニティの紐帯になっているものが「初音ミク10年の歴史」なのだということは論を待たないでしょう。
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「砂の惑星人」の軍事力を舐めてはいけない

ところで冒頭で紹介した「砂の惑星」とは、ハチの対談での発言を読むとニコニコ動画を指していることが分かります。しかし、ボカロ文化はニコニコ動画だけのものではなく、今では世界的に遍在しています(中国とかスゲーらしいですよ)。言ってみれば、砂の惑星を飛び出した我々砂星人はインターネット銀河を開拓して殖民地支配を進めているわけです。
そんななかでボカロ丼なる惑星に辿りついた開拓団は、これから先どんな生態系を生み出すのでしょうか。これから先どんなものが出てくるんでしょうか。今後の展開が楽しみです。



開拓団に加わりたい方は!

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