椎名林檎が無邪気に日の丸を振れる日は来るのか?

世間はフジロックで盛り上がっておりますね。僕は体が弱い方なので野外ロックフェスには食指が動かないんですが、当然動向は気になるわけです。

さてさて、今日は椎名林檎が出演したそうなのですが、ツイッターを見てたら一部界隈でこの写真が注目されていました。

要はファンが日の丸や旭日旗を沢山振ってることにショックを受けてる人がいたわけです(Naverまとめにもなってます)。
とはいえ椎名林檎のファンにとっては 「今更何を言ってるんだ」といった話でして。というのもこの旭日旗は実は彼女のライブグッズとして販売されているもので、しかも2008年の時点で既に売られてるんですって。なので事実関係としては、椎名林檎のコアなファンが示し合わせて彼女のグッズを持ってきたというだけの話です。一部のファンがライブイベントで空気を読まずに云々というのはどこでも良くあります(というか僕がそうだし…)。

東京事変を結成する以前の椎名林檎を思い返してみても、あの頃は昭和歌謡風なレトロ系ポップスが受けてたんです(エゴラッピンとかクレイジーケンバンドも同じですね)。なので、日の丸や旭日旗を「古きよき日本」のアイコンとして用いていると理解するべきで、ナショナリズムと直結させてしまうのはズレてる感じがします。

ちなみに、「君が代」についていえば、政治性は国旗以上に漂白される傾向があります。音楽学者の増田聡は、君が代のJ-POPアレンジの変遷を辿ったうえで「今日の君が代とは、若い世代にとっては、単に『ニッポン』を指し示す音楽的記号に過ぎない」「歌唱に過剰な政治的意味を読み込んではなるまい」と指摘しています。もちろん君が代は国歌である以上は政治性がゼロになるなんてことはあり得ませんが、ファッショナブルに歌えるレベルにはなっているということですね。

…しかし、日の丸や旭日旗を無邪気に扱えないのが日本の現状です。しかも現在進行中の社会問題として、一部の右翼団体が日の丸や旭日旗を大量に掲げて暴力的言動に及んでいたりするわけです。いわゆるヘイトスピーチですね。また、つい先日には国立大学にも国旗掲揚の要請があったように、学校での日の丸問題はさらにこじらせているとすら言えます。もっと言うと安保法制の問題もつながってきますし、国外に目を向けても排外主義的ナショナリズムが流行っていることは明らかです。こうなってしまうと日の丸を「古きよき日本」のアイコンとして使うことは難しいですし、残念ながらひと昔前よりも更にややこしくなってしまいました。増田の指摘は2005年のものですが、もし今誰かが君が代カバーをしたら若干違う反応があるかもしれません。

今回の件もそうですが、NHKの2014年サッカーテーマ曲「NIPPON」の発表当初は椎名林檎に対して「右翼的」だとか「(右翼的なものに)絡め取られることへの自覚の無さ」の批判がありました。先述の通り彼女の表現は政治性から来ているわけではないので本人もウンザリしたご様子です。しかし残念ながらいつまでも無邪気ではいられないでしょう。とりわけ彼女は日本一の音楽家ですから、その表現が発するメッセージは波及力抜群です。何らかの姿勢を示さなければならない時が来ていることかと思います。問題は、椎名林檎でさえ振り回されるほどの凄まじい速度で社会が変動しているということです。

海外のロックフェスの映像を見てみると、結構なデカさの国旗が振り回されていることがあります。それはなかなか味があるものです。果たして日本のフェスでも同じ光景を観る日が来るのでしょうか。それとも未来永劫日の丸は煙たい存在になったままなのでしょうか。



きっと今年は、日の丸を巡るニュースがどんどん出てきます。安保、オリンピック、首相談話。政治ネタに興味が無い読者もいるかと思いますが、 こうやって音楽表現に思いを馳せながらニュースを見てみると、少し印象が変わってくるかもしれませんね。





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