M3秋2018での入手作品+αを全部レビュー【第三回】

実は私、とある音楽ライター講座(全五回)に先日参加しまして(中略)引き続き同人音楽の新作をレビューしていきます。紹介ではなくレビューなので基本大きなお世話のスタイルです。

今回は可愛いのいきます。フーリンキャットマーク、syvyys.、うぐむぐ。

フーリンキャットマーク「ルチア

アキシブ系というジャンルがあります。渋谷系といえば90年代に通称オザケンこと小沢健二とかその辺が中心的になっていた、若干ヨーロッパくさくて力まない感じのポップミュージックですね。んで、それとアキバ系カルチャーが結びついたのがアキシブ系。坂本真綾や花澤香菜みたいなアニメ声優のプロデュースを渋谷系ミュージシャンが受け持つようになったことでアキシブ系が表立ったと僕は認識しています。

さて、このフーリンキャットマーク、そのアキバとシブヤのバランスがとても秀でているアキシブ系同人音楽ユニットです。旧譜からの一曲を紹介するのですが、ジャズ系のメロウさと、ファミコン系ピコピコ感と、萌え萌えしい可愛らしさ・キラキラ感が高レベルで融合しているのがこの「アキシブターンアラウンド」という曲でした。フーリンキャットマークが他のアキシブ系と違うのは、サウンド面でのアキバ感がすごく良く構成されてるところだと思います。声優が渋谷系やればアキシブなのかというとそれは違うとずっと思ってたので、発見でした。
そんなフーリンキャットマークの新作「ルチア」、これまでの印象と比べかなりギターが全面に出ているけど、全体的に大人っぽい仕上がりだなというのが第一にあります。ジャケットの雰囲気からも、そういう作風をねらってるのかな?なんて。演奏がどこか生っぽかったりして、ライブ感があるなぁと思って聴きました。表題曲の「ルチア」、モチーフがバレリーナの卵というのも込みでハイセンスなラウンジミュージックな曲なんですが、なんとなく生演奏したくなる印象も受けました。

そして個人的に気になったのが、音楽的なバックグラウンドはオルタナティブロックにもある模様。特に一曲目に僕はびっくりしたのですが、「ハイカラ素粒子が宙を舞う」という曲のタイトルといいイントロといい結構なNUMBER GIRL臭がするんですよね。というか最初の10秒がすごいそれっぽい(笑)。オルタナティブの文脈でcymbalsを聴いてユーロポップに転向する人は身近にもいましたね…。
ところでアキシブ系のライブってどこでやるんでしょうね?地理的には中間地点が赤坂なんですけど。…なんて思っていたら、実際にアキシブ系同人ライブイベントが企画されているようです。引き続き楽しみにしています。
http://yatakacorporation.web.fc2.com/
https://twitter.com/markyataka
https://huringcatmark.booth.pm/

syvyys.「newborn spring」「fade away」

音楽やボイスドラマ作品をメインに色々されているLideaによるソロ作品。syvyys.の発音が分かりませんがCHVRCHESみたいな読みづらさが渋いですね。渋さと言えば、このジャケットなのに「曲によってはコンポーザーにblankey jet cityっぽくしてほしいとお願いした」と聴いてホイホイ釣られました次第です。聴いてみると、まぁそういう解釈になるよねwみたいな納得感がありましたがそういう分かりづらい話はさておきですね…

さて2枚シングルを聴いて、一番面白かった曲は「初夏」でした。この曲はアレンジまでLidea一人で担当していて、基本的には可愛らしい声で歌っているし、曲調もふわっとしているんですが、いい感じに音が汚いんですよね。そういうのを作ろうとするときには制作を全部ひとりでやれちゃうことが大事だと思いますし、その辺は同人音楽のだいご味かなと思ってます。あとはまさかのニンジャスレイヤーネタの曲「さくら」が混じってるあたりも同人音楽って感じです。すごいやさしいピアノの曲なんですが、ニンジャスレイヤーフロムアニメイシヨンのEDに出てくるようなバンドの対岸みたいな音楽に至ってるのも面白い。

両方通して聴いた感想としてはまだ模索されてる部分も多いのかなとは思いました。周りの人がどう思うかは分かりませんが僕はこういう「ドラムまで歪ませときました」系の曲が好きなので引き続きやっていただけると僕が喜びます。
http://syvyys.com/
https://syvyys.booth.pm/items/1074910
https://twitter.com/lidea_syvyys

うぐむぐ「さかさま☆トイボックス」

コンポーザーodasisとボーカルうぐのユニット。公式キャッチコピーは表向き「うさぎの国から癒しの魔法を届けます。 おもちゃ箱をひっくり返したようなUGUMUGUサウンドをご堪能あれ!!」ということになってて、実際電波ソングといえば電波なんですが、とってもメロウで沁みるサウンドなんです。電波だけど。

そう、電波なのにメロウで沁みるんです。僕は電波ソングというものが結構好きで、日本固有の音楽ジャンルとして秀でていると思ってるんですが、うぐむぐはその中でも新ジャンルじみてて気に入ってます。今作の2曲目「れいぞうこ せおって」という曲、冷蔵庫を背負ったまま旅に出かけるという一見珍妙な話なのですが、その可愛げの裏腹にとっても哀愁増し増しギターフレーズがたまりませんね。遺された男子の生活感ある哀しさが表現されてるんです。電波だけど。

僕が思うにうぐむぐサウンドの良さ、このメロウさにうまいこと「おもちゃ箱をひっくり返した」感が乗っかってることだと思います。具体的に言うと効果音の散らかり方が絶妙。これは「れいぞうこ せおって」に限らず全般的に特長です。くどくないんですけど凄くたのしい。散らかりと散らかしは全く違うなーってことをつくづく思うんです。おもちゃを画材にする現代アート作家に藤浩志という方がいるんですが、あぁいう高度に洗練しすぎたおもちゃの散らかし方を思い浮かべます。もしくはEテレの5分番組のような。いや、電波なんですけど。
https://twitter.com/odasis
http://odasis.net/
https://booth.pm/ja/items/1077662

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